- 2020年06月27日
- 脳梗塞の後遺症
重度の脳梗塞の方の後遺症とリハビリについて
こんにちは。理学療法士の高橋です。
- 重度の脳梗塞になったらどんな後遺症でてしまうのか?
- 後遺症は回復するのか?
- どんなリハビリをしていくのか?
- 退院後はどうするのか?
こんな疑問にお答えする記事を作成しました。
最後まで読んでいただけると、重度の脳梗塞についての情報は網羅的に分かるようになると思いますので、ぜひご覧ください。
重症な脳梗塞
脳梗塞は、大きく分けて3つに分類されます。
不整脈の1つである心房細動が原因で、心臓の中にできた血の塊が脳の血管で詰まる『心原性脳塞栓症』、動脈硬化が原因で脳へ向かう太い血管の血流の流れが悪くなって生じる『アテローム血栓性脳梗塞』、脳内の細い血管が詰まる『ラクナ梗塞』の3つです。
「重症な脳梗塞」は、心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞を指していることが多く、これらは、太い血管が詰まって生じることが多い脳梗塞のため、その分症状が重くなりやすいという特徴があります。
【関連記事】軽度の脳梗塞についての基本知識
心原性脳塞栓症とは
心臓内にできた血栓が、脳の中の血管まで流れて脳の太い血管を詰まらせることで生じる脳梗塞のことです。
不整脈のひとつである心房細動が主な原因と言われています。
心原性脳塞栓症は、それまで全く問題のなかった脳血管が突然詰まるため、脳梗塞の範囲は広くなることが多く、症状は重くなりやすいという特徴があります。
アテローム血栓性脳梗塞とは
脳の比較的太い動脈や、首の動脈(頸動脈)の動脈硬化が進行し、血の塊を作って詰まらせたり、血の塊が剥がれて流れていき、脳の中の血管を詰まらせてしまうことによって生じる脳梗塞です。
発症時の症状は比較的軽い場合が多いですが、徐々に血管が詰まっていく脳梗塞なので、症状が進行しやすい(症状が重くなりやすい)ことが特徴です。
アテローム血栓性脳梗塞の原因は、動脈硬化を進行させる高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の生活習慣病と言われています。
重症な脳梗塞の後遺症と予後
重度な脳梗塞の後遺症
重度な脳梗塞になると、自分の力では立ち上がったり、歩いたり、起き上がりや寝返りをすることができなくなってしまうケースもあります。
その原因には手足の筋肉などに力が入りづらくなる運動麻痺という症状や、筋肉に力が入り過ぎてしまう筋緊張異常、関節が固まってしまう拘縮などがあります。また、感覚障害が重症だと手足に触れたものの感覚が全く分からなくなってしまう事もあります。
そして、見た目上では分かりにくい高次脳機能障害という症状が出現することもあります。
高次脳機能とは、言語、認知、記憶、学習、行為などと呼ばれる機能を指すと言われており、これらの機能が障害された状態を高次脳機能障害といいます[1]。少し分かりにくいかもしれませんが、具体的には人の話している内容が理解しにくくなったり、正しい言葉を発することができなくなったり、服の着方が分からなくなったり、状況の判断が難しくなったりするなどの症状があります。
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重症な脳梗塞の予後
重症な脳梗塞では回復予後も悪くなってしまうことが多くあります。特に意識障害(刺激をしても覚醒しない状態)や、認知症、夜間せん妄、高度な心疾患などの症状がある80%以上の方は生活上の動作に全面的な介助が必要になると言われています[2]。
歩行が自立する可能性については、入院時に完全な麻痺で足が動かない方で6%、重力に逆らって足を動かせない方で21%と言われております[2]。また、上肢が実用的に使える状態になるのは入院時に重症な方の11%と言われています[2]。
これらのことから考えると重症な脳梗塞の方の多くは歩くのに介助が必要になり、麻痺した手を実用的に使うのが困難になってしまうということになります。
重症な脳梗塞となった方のリハビリとは
重症な方のリハビリでは色々な道具を使って行うことが多いです。
例えば、足に力が入らなくて自力で立ち上がれない方や立位姿勢をキープできない方へは、装具を使ってリハビリを行うことがあります。
使用する装具は股関節まで覆う長下肢装具と呼ばれる物やすねまでの長さの短下肢装具など様々な種類があります。その方の症状に合わせてベストな装具を選びリハビリを行います。
また、電気刺激装置を使ったリハビリ方法もあります。これは上肢・下肢のどちらにも使えるリハビリ方法です。脳梗塞の影響で麻痺した筋肉や神経に電気を流し筋肉を働かせます。この方法は様々な論文でも効果が実証されているリハビリ方法です。
【関連記事】手がほとんど動かせない方への最適なリハビリ方法とは?
重症な脳梗塞となった方の生活とは
退院後の生活(介護保険サービスの活用)
重度な脳梗塞になった方は、病院を退院した後の生活において、何かしらの介助が必要になると思われますが、その方の症状や能力によっても必要な介助が異なります。生活でどんな介助が必要になるかについては主治医や担当のリハビリ専門職に相談されると良いと思います。また、一定の条件をクリアすれば介護保険などのサービスを使うことも出来ます。
【関連記事】脳梗塞になったら必ず知っておきたい介護保険の知識
家族の関わり方(家族の支援)
重度な脳梗塞になられ、ご本人様は今までのご自身と違い思ったようなことができず、もどかしい気持ちになられている方も多くいらっしゃいます。
その際はご家族様のご支援が心の支えになることも多いようです。しかし、必要な介助をご家族様がすべて行うのは限界があると思います。
介護保険などのサービスを使うこともできますし、脳卒中者の患者会や家族会といった抱えているお悩みなどを相談することができる機関もあります。必要に応じて活用していきましょう。
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まとめ
今回は重症な脳梗塞の後遺症やリハビリ、生活についてご紹介しました。同じ脳梗塞でも障害される脳の領域やその範囲によっても出現する症状は異なるため、必要なリハビリやサポートも変わってきます。
ジョイリハNEXTではその方のお困りごとについて相談をお受けしております。ご相談されたい方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。
文責 ジョイリハNEXT 理学療法士 高橋勇希
引用
[1]細田多穂、理学療法評価学テキスト、南江堂、2013年
[2]道免和久、脳卒中 機能評価・予後予測マニュアル、医学書院、2017年
[3]聖マリアンナ医科大学 東横病院脳卒中センター:脳梗塞.http://www.toyoko-stroke.com/explain/infarction.html、(2020年6月12日引用)
[4]京都大学医学部付属病院 脳神経外科:脳梗塞.http://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis26/、(2020年6月12日引用)