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豆知識ブログ

2020年05月29日
脳梗塞のリハビリ

脳梗塞の歩き方に着目したリハビリ方法

脳卒中の歩く姿

脳卒中の後、歩けるようにはなっても、なかなか歩き方が改善されない、左右対称に歩けずぎこちない、もう少しきれいに歩きたい、という方もいらっしゃると思います。

間違った歩き方を続けると、疲れやすくなったり、関節に痛みが出ることもあります。足に装具をつけている方は、装具が足にあたり痛みや皮膚に傷を作ってしまうこともあります。

今回は、「歩き方の改善」に必要なリハビリ方法についてご紹介します。

 

歩き方を改善するために必要なこと

歩き方を改善するために必要なことの1つとして、歩行の対称性の改善が挙げられます。

歩行の対称性とは、歩く時に左右の足が同じリズムで歩けているか、歩幅は同程度かなどが挙げられます。

脳卒中患者さんは、麻痺をしている足に体重がかけにくいため、歩行時に麻痺側に体重をかける時間が短くなり、左右の歩幅やリズムが異なってきます。

では、歩き方や対称性を改善するためには、具体的にどんなリハビリが必要でしょうか。過去の研究知見をもとに解説します。

 

歩き方を改善するリハビリ方法とは?

今回紹介するリハビリの方法は、機能的電気刺激療法(Functional Electrical Stimulation; FES)です。

FESは、筋肉または末梢神経を刺激して、麻痺した筋肉を収縮させ、機能を補う治療方法です。

特に今回は、中殿筋という筋肉に対し、FESを行う方法を紹介します。中殿筋はお尻の横側にある筋肉で、歩く時に体を安定させる重要な役割を持ちます。

脳卒中発症から6ヶ月経過した患者を対象とした研究では、中殿筋に電気を流しながら歩行練習を行うことで、歩幅や歩行の対称性が改善したとする論文があります[1-3]。さらに、この練習を行うと、歩行速度や歩行の耐久性も改善しました。

FESを行った群は歩幅が平均約20cm向上したのに対し、介入しなかった群は平均約2cm程度の変化しかみられませんでした[1]。

このように、電気刺激を行うことで、脳卒中発症から半年以上経過していても、歩行の対称性を改善させる可能性が報告されています。では、具体的にどのように練習をしていくのか、説明をしていきます。

 

具体的な方法とは?

歩き方を改善するためには、練習の量の確保が必要です。紹介した論文の具体的な介入期間としては、FESを行いながらの歩行練習を1回40分、週5回、計6週間行っていました[1]。

電気刺激療法は、電気刺激装置を用いて行います。動かしたい関節の動きに対応した、筋肉、神経へ電極を貼り刺激を行います。刺激の強さは、セラピストと相談しながら決めます。利用者さんが感じる刺激としては、ピリピリした程度で、強い痛みを伴うことはありません。

 

まとめ

今回は歩き方の改善に対する電気刺激療法について紹介しました。

自分は適応になるのか、具体的にどんな練習が必要かについては、医師や理学療法士、作業療法士といったリハビリ職に相談してみましょう。

ジョイリハNEXTでは、リハビリの体験プログラムを設けています。

リハビリについて、ご相談がある方は、是非一度ご相談いただければと思います。

 

文責:ジョイリハNEXT 理学療法士 小向佳奈子

 

引用文献

1)Yijung Chung, et al.: Therapeutic Effect of Functional Electrical Stimulation-Triggered Gait Training Corresponding Gait Cycle for Stroke. Gait Posture.. 2014;40(3):471-5.

2)Jung-Hyun Kim, et al.: Functional Electrical Stimulation Applied to Gluteus Medius and Tibialis Anterior Corresponding Gait Cycle for Stroke. Gait Posture . 2012;36(1):65-7.

3)Min-Kwon Cho, et al.: Treadmill Gait Training Combined With Functional Electrical Stimulation on Hip Abductor and Ankle Dorsiflexor Muscles for Chronic Hemiparesis. Gait Posture. 2015;42(1):73-8.

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2020年05月28日
脳梗塞の後遺症

脳梗塞の後遺症は生活にどう影響するのか?|リハビリ専門職が解説します

脳梗塞の後遺症がある人の生活風景

こんにちは。理学療法士の河野です。

脳梗塞を発症すると、損傷の場所や程度によって、さまざまな後遺症が出現します。また、その後遺症の程度も、人によってさまざまです。

今回は、後遺症の症状別に、それぞれ日常の生活にどのような影響がでてくるか確認してみましょう。

また、それぞれの対策についても記載するので、参考にしてみてください。

 

後遺症の症状から、生活にどう影響するか確認しよう

脳梗塞の後遺症は、人によってさまざまです。

手足が動かしにくくなる方もいれば、手足は発症前と変わらないけれど、話しにくくなる方もいらっしゃいます。

脳には部位ごとに役割があります。例えば手足を動かす役割を担っている脳の部位が損傷されてしまうと、手足が動かしにくくなる症状が現れてしまいます。

後遺症の種類に関しては、過去のブログで詳しくご紹介しているので、そちらを確認してみてください。

今回は、後遺症の症状から、日常の生活にどのような影響がでるかそれぞれ確認しましょう。

【関連記事】脳梗塞の後遺症まとめ

 

上半身の運動麻痺による影響

上半身の運動麻痺でも、腕があがりにくい方、腕はあがるけれど指が動かしにくい方、色々な症状があると思います。

上半身の運動麻痺では、主には食事動作、着替え動作、手を伸ばす動作に影響が出ることが多いです。

▼食事動作

利き手の指の運動麻痺が後遺症として残った場合、お箸が持ちにくくなることがあります。

お箸を持ちやすくする補助具もありますが、そちらでも難しい場合は、フォークやスプーン等を使用する場合が多いです。

また、フォークやスプーンの柄の太いものを使用することで、更に握りやすくなります。

手の指が動かすことができず、握れない方は、利き手交換と言って、左手でお食事をする方が多いです。ただし、右手でフォークやお箸を持つリハビリを行い、最終的に右手でお食事をする方もいらっしゃいます。

▼着替え動作

片側の腕や手が動かしにくい場合、洋服の脱ぎ着が大変になることがあります。

洋服を着る場合は、動かしにくい方から袖を通す、洋服を脱ぐ場合は、動く方から脱ぎ始める、などのポイントがあります。

間違った側の袖から着たり脱ごうとすると、大変な場合があります。

▼手を伸ばす動作

腕があがりにくい方は、無理に反対側の手で引っ張って挙げるようにすると肩に痛みが出る場合がありますので、注意が必要です。

上方の物を取るときなど、無理にあげるのではなく、反対側の手で無理せず取るようにしましょう。

また、あまり高い所には物を置かず、楽に手の届く範囲に物を置くようにしましょう。

 

運動麻痺(下半身)による影響

下半身の運動麻痺で、問題となる点は転倒、階段動作、移動手段です。

▼転倒
足首が動かない後遺症が残った場合、歩いた際に段差にひっかかり転んでしまう可能性があります。そこで、ひっかからないように装具を履かれる方が多いです。

装具の締め付け感や見た目から、装具にあまり良い印象を持たれていない方がいらっしゃるかもしれません。その場合、ご自身の判断で装具を外して生活するのではなく、一度医療スタッフに相談してください。

中には、屋外での移動は装具を履いて、自宅内は装具を外して生活している方もいると思います。

自宅内では、廊下から部屋に入る低い敷居があり、ふとしたときに気づかずひっかかる場合があります。そうならないためにも、少し足を高くあげてひっかからないように防止するなど、注意してみてください。

▼階段動作

階段の昇り降りの際に手すりの使用が必要となる場合があります。

足首だけでなく太ももをしっかりあげることが難しくなった場合、1段ずつ交互に昇るのではなく、1段ずつ足を揃えて昇る方法に変更する必要があります。

階段の昇り降りは、ご本人の恐怖心が強くなることが多いので、十分な練習が必要です。

予め行先が決まっている場合は、エレベーターの位置を事前に確認しておくことも、1つの対策です。

▼移動手段

発症される前は、杖や装具の補助具を使わないで歩かれていた方が多いと思います。

しかし、運動麻痺が出現することにより、バランスがとれなくなったり、歩くことが難しくなる場合があります。ご自身に最適な杖や装具を使うことで、再びお一人で歩くことができるようになる方もいます。

装具や杖を使用しても、歩くことが難しい方は、車椅子が主な移動手段となります。屋内では車椅子をご自分で操作し移動されていたとしても、屋外では段差等の問題からご家族様の協力が必要となる場合があります。

 

感覚障害による影響

感覚にも種類があります、痛みを認識する感覚、熱さや冷たさを認識する感覚、指をどれくらい動かしたか認識する感覚などさまざまです。

ただ感覚障害の程度にも、全く分からない、ハッキリ分かるの0か100ではなく、少し鈍いなーという方も大勢いらっしゃいます。

感覚障害による影響では、怪我、やけど、転倒に注意が必要です。

▼怪我

痛みを認識する感覚が分かりにくい場合、気が付かない内にどこかにぶつけて怪我をしている場合があります。

少し感覚が鈍い方は、今なにかぶつかったなと分かるかもしれません。その時は、ぶつけた場所を目で見て怪我をしていないか確認するようにしましょう。

感覚が全く分からない方は、お風呂の時間でも結構ですので、ご自身の身体に怪我がないか確認しましょう。特に肘や足の指先は怪我をしやすいので注意しましょう。

▼やけど

熱さや冷たさを認識する感覚が分かりにくい場合、火傷をしてしまうことがあります。

お風呂で湯船につかる際は、必ず感覚が分かる側の手足で温度を確認してから入浴するようにしましょう。

▼転倒

ご自身の手足をどれぐらい動かしたか認識する感覚が分かりにくい場合、物を持ち損ねてしまったり、階段を踏み外してしまうことがあります。

特に段差の昇り降りの際は、転倒に繋がってしまいます。必ず目で見て確認しながら、動作を行うようにしましょう。

 

嚥下障害による影響

嚥下障害とは、食べ物を飲み込みにくくなったり、水分を飲むとむせてしまうといった症状が出ることです。

嚥下障害による影響では、食事形態に注意しなければいけません。

▼食事形態

しっかり飲み込めないと、肺炎になってしまう場合があるので、どのような状態の物を食べるかは特に慎重にならなければいけません。

特にサラサラしている水分は、嚥下障害の後遺症がある方にとってむせやすいものです。むせないために、トロミ剤といって、水分をゼリー状にして摂取する方法があります。

普段のお食事も、固形の物がなかなか飲み込めない方は、少し軟らかくした物を食べたり、食べ物自体にトロミをつけた物を食べるなどの工夫も必要です。

どのような水分のトロミの程度、食事の形態かは、必ず担当のスタッフに確認しましょう。

また、時間が経過すると、嚥下機能の低下から今までむせずに食べれていた物も、むせやすくなる場合があります。その場合は、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

 

言語障害による影響

言語障害による影響では、コミュニケーションの方法に工夫が必要となります。

▼コミュニケーション

伝えたいことはご自身の中にあるけれど、相手にうまく言葉で伝えらない場合や、相手が話していることの理解が難しくなる場合があります。

言語障害の後遺症がある方とお話する場合は、短い言葉でゆっくりと話すと伝わることがあります。長い文章ですと理解が難しいですが、「天気がいい」等、短い言葉でゆっくりと伝えるようにしましょう。

また、質問する場合は「はい / いいえ」の2択で答えられるようにすると答えやすいです。

例えば、「ご飯、何食べたい?」等の答えに複数の選択肢がある、かつご自身で言葉を選んで答えなければいけない質問になっていると、答えることが難しくなる場合があります。そうではなく、「ご飯、魚がいい?お肉がいい?」等の答えやすいように、質問することも大切です。

 

高次脳機能障害による影響

高次脳機能障害とは、新しく記憶することが難しくなる記憶障害や、集中力が欠けてしまう注意障害、左側の物が認識しにくくなる半側空間無視など、様々な症状があり、その総称を言います。

脳梗塞になったからといって、高次脳機能の全ての症状が出るわけではありません。半側空間無視のみ出現する方もいれば、記憶障害と注意障害の両方の症状が出る方もいます。

▼記憶障害

記憶障害の方は、新しいことを記憶することが難しくなります。数分前に伝えたことを忘れていたり、どこに物を置いたか分からなくなってしまう場合があります。その場合は、ノート等に忘れないようにメモ書きをする習慣をつけましょう。

また、メモを書くだけでは書いたことを忘れてしまう場合があるので、定期的に見返す習慣もつけましょう。

▼注意障害

注意障害の方は、1つのことに集中することが難しくなります。

注意障害の改善には、ご自身で集中するように気を付けることも大事ですが、気を付けること自体も難しい場合があります。

その場合は、集中力を鍛える練習が必要になってきます。そこで、時間を決めて、ある決まった課題に取り組む練習を行い、慣れてきたらその取り組む時間を徐々に延ばしていくなどの工夫が必要です。

課題は、最初はご本人の興味のある物から行うことで、ストレスなく取り組めるでしょう。

▼半側空間無視

半側空間無視の方は、物が見えていても、認識しにくい状態になります。右側の脳を損傷した方に多く、左側を認識しにくくなる方が多いです。

食事の際に、左側のお皿にある食べ物だけ残してしまう左側から来る人に気づかずぶつかってしまう左側の髭だけ剃り残してしまう、などの症状があります。

まずご自身で、左側の認識が難しいことを理解することが重要です。

ご自身で理解したうえで、左側に対してより気をつける必要があります。

また、顔を左側に向けることで、より認識できる範囲が広がるので、そのような工夫も一つです。

また他にも、ご家族様や周囲の方に、左側の認識が難しいことを伝え、左側を見落としていた場合に注意してもらうように約束しておくことも一つです。

失敗を繰り返すことで、更に左側に注意が向き、気を付けることができていきます。

ただ、ここでご家族様が気を付ける点として、注意のしすぎもご本人のストレスに繋がります。

気を付けることができた場合は褒め、ストレスが溜まっているなと感じた時は無理に注意しない等の対応も必要です。

※左側の半側空間無視の場合を説明しましたが、右側の半側空間無視の症状が出現する方もいらっしゃいます。

 

まとめ

上で説明した生活に影響する後遺症は、生活の中のほんの一部です。説明できていない他の症状や動作で困っている方もいらっしゃると思います。

現在、生活の動作に困っていて、医療機関に通われている方は気軽にスタッフに聞いてみてください。解決策は必ずあるはずです。

医療機関に通われていない方は、お一人で悩まずお気軽にご連絡ください。解決策をご提案させていただきます。解決するように一緒に考えていきましょう。

 

執筆者:ジョイリハNEXT 理学療法士 河野 沙季

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2020年05月26日
脳梗塞のリハビリ

脳梗塞の後遺症で手が動きにくい方へ|科学的根拠に基づくリハビリ方法の紹介

脳梗塞の手のリハビリの練習風景

こんにちは。理学療法士の小向です。

脳梗塞の後遺症で腕や手が麻痺をしてしまった時、

「どういうリハビリをすれば良いのかわからない…」

「リハビリをすることでどの程度よくなるのかイメージできない…」など、

不安に思う方も多いのではないでしょうか。

今回は、脳卒中ガイドライン[1]にも掲載されているリハビリの方法の1つ、CI療法についてお伝えします。

 

手の麻痺はなぜ回復しにくいのか?

脳卒中後にリハビリをしていると、歩行は上手になっていくのに、手が中々上手に使えるようにならない、治るのだろうかなど不安に思う方も多いのではないでしょうか。

手の回復が遅い理由、それは「学習性の不使用」が関わっているかもしれません。

 

▼学習性の不使用

学習性の不使用とは、麻痺をしている手を使わない状態が続いた場合に、麻痺をした手を使わないことを学習してしまうことをいいます。

足と違って手は、麻痺をしていない方の手で代わりに生活動作が行えるようになってしまうため、麻痺をしている手を使う機会が極端に減ってしまいます。そうすると「学習性の不使用」となり、より手の回復を妨げてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

よって、手のリハビリでは、手を積極的に使うことが必要となります。

今回は、手を積極的に使う方法である、CI療法についてお伝えします。

 

CI療法とは

CI療法は、Constraint-Induced Movement Therapyの略で、脳卒中後に麻痺している手を積極的に使用することで、麻痺している手の機能を向上させようとするトレーニング方法です。

生活の中で積極的に麻痺をしている手を使い、再び麻痺した手の使い方を学習していきます。

CI療法は、日本脳卒中学会が発刊する脳卒中ガイドライン2015でも推奨されています[1]。

 

▼CI療法の効果

  • 日常生活での手の使用頻度の向上
  • 手の動きの質の向上

以上が報告されています[2]。

 

▼研究の紹介
例として、発症から平均約6ヶ月〜8ヶ月経過している人を対象にした研究を紹介します[3]。

この研究では、CI療法を1日2時間、週5回、3週間実施しました。手の使用頻度と手の動きの質については、表1の項目を用い、日常的においてどれくらい麻痺している手を使っているか、どれくらい上手く使えたかを評価しました。

紹介した先行研究の結果では、図1のように、CI療法群の方が、通常のリハビリを行った群よりも、日常生活での手の使用頻度や手の動きの質が向上しました[3]。

これは、日常生活で麻痺した手を全く使用していない状態から、麻痺をしていない手での介助が必要ではありますが、麻痺した手を多少使用する状態になったことを指します。

例えば、グラスを持ち上げるときに麻痺をしている手を添えられるようになるなどが挙げられます。手を使う頻度を増やすことは、リハビリの効果を向上させる上でも非常に重要な指標となります。

表1. Motor Activity Log(MAL)[4]

脳梗塞の手の使用頻度の評価の解説

図1 手の使用頻度と手の動きの質[3]

脳梗塞の手のリハビリの改善結果

他方、CI療法には適応があり、練習量の確保も重要となります。

では、どんな人が対象になるのか、どれくらい練習が必要なのかみていきましょう。

 

どんな人が対象なの?

手のリハビリをしている女性

CI療法では、脳卒中後の患者さんのうち、一般的に手首を少し動かせる人が対象となります。

具体的には手首や指が手の甲側に少しでも動かせる人です。専門用語では、手や指が伸展するといいます。

必ずしも、この対象に当てはまるかは、実際に手の評価が必要になりますので、詳しくは、理学療法士や作業療法士といったリハビリ職に相談してみると良いでしょう。

 

どれくらい練習すれば良いの?

手を積極的に使うためには、リハビリテーションの量を確保することが大切になります。具体的にどれくらいの時間、期間を行えば良いか、過去の研究をまとめた論文をもとに紹介します[2]。

▼ 必要な練習時間

CI療法の手の使用に関する最初の報告では、1日あたり6〜8時間の長時間にわたる集中的なトレーニングが提案されていました[5-7]。近年では、CI療法のさまざまな形が開発され、トレーニングの時間を減らす方法も検討されていますが、それでも、過去の研究においては、週10時間〜45時間トレーニングを行っている論文が多く含まれています[2]。

上記の時間についてリハビリを行う場合、週数回程度の外来リハビリで十分な時間を確保できない可能性があります。

よって、病院や施設でのリハビリ以外に、自宅でも麻痺をした手を使う工夫が必要になります。

 

具体的にどんな方法で行うの?

CI療法では、日常生活で使う動作の中から、利用者さんの希望や必要性に応じて練習を行っていきます。

日常生活の動作をベースに行っていきますが、いきなり箸を使ってご飯を食べるなど、難しい動作を行うわけではなく、患者さんの手の機能に合わせて、「練習の難易度」を調整しながら段階をつけて行っていきます。このときに、目標に対して、どのような段階を踏んでいるか、療法士と確認しながら行うことで、より練習の質が上がるでしょう。

また、前述した通り、リハビリ時間以外にも麻痺をした手を使う頻度を上げることが重要になります。

ただ闇雲に手を使えば良いというわけではなく、難易度に沿った課題かつ自宅環境で取り入れやすい運動の設定が必要ですので、療法士とよく相談しながら進めましょう。また自宅でできたこと、難しかったことも療法士と相談し、適切な練習になるようにしていきましょう。

 

まとめ

今回はCI療法について紹介しました。

自分は適応になるのか、具体的にどんな練習が必要かについては、理学療法士や作業療法士といったリハビリ職に相談してみましょう。

ジョイリハNEXTでは、リハビリの体験プログラムを設けています。

手のリハビリについて、ご相談がある方は、是非一度ご相談いただければと思います。

 

文責:ジョイリハNEXT 理学療法士 小向佳奈子

 

□引用

1.日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会、脳卒中治療ガイドライン2015 [追補2019対応]、協和出版、2019

2. Corbetta D, et al:  Constraint-induced movement therapy for upper extremities in people with stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Oct 8;(10):CD004433.

3.Wu CY, et al: A randomized controlled trial of modified constraint-induced movement therapy for elderly stroke survivors: changes in motor impairment, daily functioning, and quality of life. Arch Phys Med Rehabil. 2007 Mar;88(3):273-8.

4.高橋香代子、他:新しい上肢運動機能評価法・日本語版Motor Activity Logの信頼性と妥当性の検証.作業療法28:628-636, 2009

5. Miltner WH, Effects of constraint-induced movement therapy on patients with chronic motor deficits after stroke: a replication. Stroke. 1999;30(3):586-92

6. Taub E et al: An operant approach to rehabilitation medicine: overcoming learned nonuse by shaping. J Exp Anal Behav. 1994;61(2):281-93.

7. Taub E, et al: Constraint-Induced Movement Therapy: a new family of techniques with broad application to physical rehabilitation–a clinical review. J Rehabil Res Dev. 1999;36(3):237-51.

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2020年05月25日
脳梗塞のリハビリ

脳梗塞の退院後にリハビリができる施設一覧

リハビリの3つの選択肢

こんにちは。理学療法士の高橋です。

病院を退院した後にも継続してリハビリが必要と感じられている方もいらっしゃると思います。

退院後のリハビリを行う方法はいくつかありますが、大きく分けると医療保険でのリハビリ、介護保険でのリハビリ、自費でのリハビリの3つになります。

退院後のリハビリには様々な選択肢がありますが、自分にどの方法があっているか悩まれる方もいると思います。

今回はリハビリの専門職として脳梗塞の退院後にリハビリができる施設の特徴とそれぞれの選択肢のおすすめの方のご紹介をします。

 

脳梗塞の退院後のリハビリの3つ選択肢

退院後に、脳梗塞の後遺症に対するリハビリを受けることができる3つの選択肢をご紹介いたします。

 

病院の外来リハビリ

外来リハビリとは病院やクリニックなどの医療機関に通院してリハビリを行う方法のことです。

外来リハビリを行うためには医師の指示が必要になります。

希望される方はまず主治医やリハビリの担当者に相談されると良いでしょう。

 

▼おすすめの方

  • 保険を使って安価にリハビリをしたい方
  • 設備の整った医療機関でリハビリがしたい方
  • 理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職によるマンツーマンのリハビリがしたい方 など

上記の項目に当てはまる方がおすすめです。

▼メリット

外来リハビリは医療機関でリハビリを受けることになるため、設備が整った環境でリハビリを行うことができます。

病院によって多少の違いはありますが、リハビリに必要なリハビリ機器や評価器具も用意されています。また、理学療法士や作業療法士などのリハビリの専門職によるマンツーマンのリハビリが受けられるため、個人に合った内容のリハビリを行うことができます。

▼デメリット

外来リハビリにはリハビリ時間の制限があります。疾患によってリハビリができる期限が決まっており、その期限を過ぎると月に約4時間程度しかリハビリができなくなってしまいます[1]。そのため、十分な量のリハビリを実施できないと感じられる方もいらっしゃいます。

また、介護保険対象者は病院退院後のリハビリについては介護保険サービスの利用に切り替えることを進められています[2]。基本的には外来リハビリと介護保険の併用はできないため、外来リハビリを行えないこともあります。

前述していますが、外来リハビリは医師の指示によって行うことができるため、ご希望される方は主治医にまずはご相談してみてください。

【関連記事】脳梗塞のリハビリを検討中の方が知っておきたい外来リハビリの知識

 

介護保険のリハビリサービス

介護保険のリハビリでは大きくわけると通所型と訪問型の2種類があります。

通所型とは施設に通所してサービスを受けるもので、訪問型はご自宅にサービス提供者が訪問し、自宅でサービスを受けるというものになります。

 

▼おすすめの方

  • 保険を使って安価にリハビリをしたい方
  • 長期間リハビリを行いたい方
  • ご自宅での生活動作の改善がしたい方(訪問型)
  • 外出が困難な方(訪問型)
  • 他の方と一緒にリハビリしたい方(通所型)
  • 一人ではなかなかリハビリができない方(通所型) など

上記の項目に当てはまる方がおすすめです。

▼メリット

介護保険認定がある場合は、介護保険のサービスを利用することができます。そのため認定がある限り長期的なリハビリが可能です。

また、訪問型と通所型があるので利用者さんの希望やニーズに応じてサービスを選択ができます。

訪問型であればご自宅でリハビリができるため、実場面でのお風呂動作や家事動作など、生活での活動能力の改善に直結するリハビリを行うことができます。通所型であれば他の方と一緒にリハビリができるため、一人ではなかなか運動をすることができないという方も周りの方と会話などしながら楽しみながら運動を行うことができます。

▼デメリット

介護度によっては利用回数の制限があったり、他の介護保険サービスの利用の兼ね合いで決められた単位数の上限を超えてしまうためにリハビリサービスが利用できないというケースもあります。

訪問型のリハビリではリハビリ専門職によるマンツーマンのリハビリができますが、通所型では集団でのリハビリがメインになり、マンツーマンでのリハビリができない、もしくはできたとしても短時間のリハビリとなる施設が多いのが現状です。また、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職がいない施設もあります。

【関連記事】脳梗塞のリハビリを検討中の方が知っておきたい介護保険リハビリの知識

 

自費リハビリ施設

自費でのリハビリはその名の通り、医療保険や介護保険等を使わずに行うリハビリのことです。

近年自費リハビリ施設は増えてきており、病院退院後の新たなリハビリの選択肢となっています。

 

▼おすすめの方

  • 自分に合ったオリジナルメニューでリハビリがしたい方
  • リハビリの時間、内容、回数・期限などの制限なく思う存分リハビリがしたい方
  • 保険内のリハビリでは満足にリハビリが行えていない方
  • 具体的な目標がある方
  • 今の状態よりも改善を強く思う方

上記の項目に当てはまる方がおすすめです。

▼メリット

自費リハビリではリハビリの時間、回数、内容などの制限がなく、思う存分リハビリを行うことができます。

リハビリ時間に制限がない分、丁寧な評価ができるため、利用者さんの状態に合ったリハビリメニューを作ることができます。また丁寧にカウンセリングができるため利用者さんの希望や目標を把握しリハビリ方針に組み込むことができます。

リハビリ内容に制限がない分、利用者さんの希望に合わせたリハビリを行うことができます。例えば、「電車に乗って出かけたい」という希望の方には、施設内でのリハビリだけでなく、屋外歩行をしたり、実際に電車に乗る練習をしたり、お出かけ先での目的に合わせた練習などを行っていくことができます。

リハビリ回数・期限に制限がない分、利用者さんが望む限り徹底的にリハビリを行うことができます。

自費リハビリ施設では理学療法士や作業療法士等のリハビリ専門職がいて、マンツーマンでリハビリを行うことができます。また、リハビリに必要な道具や機器類も用意されているところが多いです。

▼デメリット

自費リハビリは保険サービスとは異なり、サービスの利用料が全額自己負担になります。

施設によって様々ですが60分で1万円前後の施設が多い状況です。

保険内のサービスと比べると自己負担額が高くなりますが、その分メリットも多くあります。

【関連記事】脳梗塞の方が多く通う自費リハビリ施設とは⁉

 

まとめ

今回はリハビリの専門職として脳梗塞の退院後にリハビリができる施設の特徴とそれぞれの選択肢のおすすめの方についてご紹介しました。

リハビリの選択肢は様々ありますが、その特徴を理解しご自身に合ったリハビリを行えると良いですね。

しかし、お一人で考えてもなかなわからないという方もいらっしゃると思います。

ジョイリハNEXTではこれからのリハビリ方法について悩んでいるという方のご相談も受けております。

些細なことでも構いません。ご連絡いただけたら幸いです。

 

□引用

[1]厚生労働省、令和2年度診療報酬改正について 厚生労働省告示第57号 第7部リハビリテーション、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603758.pdf、最終閲覧日2020年5月22日

[2]厚生労働省、要介護被保険者等である患者に対する入院外の維持期・生活期の 疾患別リハビリテーションに係る経過措置の終了に当たっての必要な対応について、https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190312_4.pdf、最終閲覧日2020年5月22日

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2020年05月23日
脳梗塞の後遺症

軽度の脳梗塞とは何か?【リハビリの専門家が解説】

軽い脳梗塞の女性

脳梗塞を発症した後、医師から「軽い脳梗塞ですね」と言われた事がある方もいらっしゃるかもしれません。

脳梗塞に軽い、重いってあるの?と思いますよね。

今回は、「軽い脳梗塞」についてどのような脳梗塞を指しているのか、また発症した後の症状が、どのような改善をたどるかについてご説明します。

 

軽い脳梗塞ってどういうもの?

 

脳梗塞とは

脳梗塞とは、脳の中の血管が細くなったり、血の塊が脳の血管に詰まって生じる疾患です。

血管が詰まると、そこから先に血流が流れなくなってしまい、脳の細胞に栄養が行きわたらなくなり、細胞は壊死してしまいます。

脳梗塞の種類は、大きく分けて3つに分類されます。

不整脈の1つである心房細動が原因で、心臓の中にできた血の塊が脳の血管で詰まる『心原性脳塞栓症』、動脈硬化が原因で脳へ向かう太い血管の血流の流れが悪くなって生じる『アテローム血栓性脳梗塞』、脳内の細い血管が詰まる『ラクナ梗塞』の3つです。

医師がよく言う「軽い脳梗塞」とは、ラクナ梗塞を指していることが多いです。

 

軽い脳梗塞の”ラクナ梗塞”とは

なぜラクナ梗塞は、軽い脳梗塞と言われるのか。

それは、とても細い血管の梗塞のため、後遺症の症状の程度としても、他の心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞と比べると症状が軽いことが多いためです。

ラクナ梗塞を発症していたとしても、部位によっては症状も出ないこともあるので、人間ドックで初めて見つかる場合もあります。

しかし、小さい梗塞だからといって軽視してはいけません。

ラクナ梗塞の原因は、高血圧や糖尿病等が挙げられます。これらを放置すると、再び脳梗塞を発症するリスクがあります。

必ず医療機関で治療を行ってくださいね。

 

症状からみる経過について

脳梗塞を発症すると、なにかしらの後遺症が出現する場合があります。

発症した時の症状から、どの程度改善するかに関しての報告をお伝えします。

 

腕の麻痺の経過

入院時に、手・腕に麻痺が全くない方は、80%の方が退院後も日常の生活で問題なく使用できると言われています。[1]

手・腕を挙げることはできるが、麻痺によって少し動きがぎこちない方は、77%の方が退院後も日常の生活で問題なく使用できると言われています。[1]

入院時に、麻痺によって手・腕を重力に逆らって動かすことができない方は、11%の方が退院後も日常の生活で問題なく使用でき、24%の方が日常の生活の中で一部(文字を書く際に、麻痺している手で紙をおさえる等)使用できるようになると言われています。[1]

まとめると、

▼入院時に、手・腕の動かしづらさがない方、また少し動かしづらい方も、退院後は多くの方が日常の生活で問題なく使用できます。

▼入院時に、手・腕を上にあげることができない方は、退院後の日常の生活で、問題なく使用できる方も少なからずいますが、多くの方が何らかの支障を生じています。

 

歩行動作の経過

入院時に歩くことは困難であっても、お一人でベッドから起き上がることやベッドの上で座ることができる方は、最終的に93%の方がお一人で歩けるようになり、そのうち84%の方は、屋外もお一人で歩けるようになったと報告されています。[2]

お一人で歩けるようになった方の4%の方が短下肢装具を使用し、40%の方が杖を使用していました。

入院時に歩くことや起き上がり、座ることも全て困難であっても、最終的に半数の方がお一人で歩くことができるようになったが、一方で11%の方は起き上がりや座ることはお一人でできるようになったが歩くことは困難、39%の方は全ての動作に介助が必要なままであったことが報告されています。[2]

また、発症した際の年齢も大きく関わっており、59歳以下の若い方であれば、最終的にお一人で歩けるようになる可能性が高いと言われています。

他にも、入院時に「食事」「尿意」「寝返り」の3項目中、2項目または3項目自立していれば、最終的に多くの方がお一人で歩くことができるようになると報告されています。[2]また、その70%の方が屋外での歩行も自立しています。

一方で、3項目のうち1項目も自立していない場合、最終的にお一人で歩くことができる方は26%であり、60%の方は動作全般全介助に留まると報告されています。[2]

まとめると、

▼入院時に起き上がることやベッドの上で座ることができる方は、最終的に多くの方がお一人で歩けるようになります。

▼発症した際の年齢も大きく関わっており、59歳以下の若い方であれば、最終的にお一人で歩けるようになる可能性が高いです。

▼入院時に「食事」「尿意」「寝返り」の3項目中、2項目または3項目自立していれば、最終的に多くの方がお一人で歩けるようになります。

 

感覚障害の経過

感覚障害とは、手足や顔・身体の感覚が鈍くなったり、逆に鋭く感じることがあります。

またそれを、痛みや痺れとして感じる方もいらっしゃいます。

脳卒中を発症してから、感覚障害の回復は3ヶ月以内に最もみられ、6ヶ月またはその後に継続して回復がみられると報告されています。[3]

しかし、回復の程度には個人差があることや、完全な回復には至らないことも報告されています。[3]

 

後遺症は残るの?

脳には、手足の動きを司っている場所、感覚を司っている場所、言葉を司っている場所等、それぞれ場所によって役割が異なってきます。

どの血管が詰まってしまったかによって、出現する症状はさまざまです。

また、障害された部位、程度によって後遺症は残ってしまう可能性があります。

しかし、リハビリを継続することで改善する報告も多くあります。

 

再び脳梗塞にならないために予防は大事

脳梗塞の原因は、高血圧や糖尿病、高脂血症を原因とする場合が多いです。

一度、脳梗塞を発症された方は、これらの根本治療をしっかりと行わなければ、再び脳梗塞を発症する可能性があります。

これらの治療には、薬での治療はもちろんですが、合わせて普段の生活で予防することも重要になってきます。

また、今後「少し手足が動かしにくくなってきた」「少し話しづらくなってきた」等、新たに症状が出た場合は、脳梗塞を疑う必要があります。

脳梗塞かも、と思ったらすぐ医療機関を受診してください。

脳梗塞を発症した場合、その医療機関の医師が判断にもよりますが、血の塊を溶かす治療を受けられる場合があります。

そのタイムリミットは、発症してから4.5時間以内といわれています。

なにか身体に異変を感じたら、必ずすぐに医療機関を受診してくださいね。

 

まとめ

「軽い脳梗塞」とよく言われる『ラクナ梗塞』についてご説明しました。

いくら症状が軽いと言われても、発症されたご本人様からすると、とても重大なことです。

後遺症が残る場合もありますが、リハビリによって改善するケースも多く報告されております。

気になった点などございましたら、お気軽にご連絡ください!

 

□引用文献

[1]Nakayama H, Jorgensen Hs, et al.: Recovery of upper extremity function in stroke patients: the Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil 75: 394-398, 1994

[2]二木立, 脳卒中リハビリテーション患者の早期自立予測.リハ医学19, 201-223, 1982

[3]Winward CE, Halligan PW, et al.: Somatosensory recovery: A longitudinal study of the first 6 months after unilateral stroke. Disability and Rehabilitation 29, 293-299, 2007

□参考文献

[4]京都大学医学部付属病院 脳神経外科:脳梗塞.

脳梗塞

(2020年5月12日引用)

[5]聖マリアンナ医科大学病院:業務の案内.

https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/kanja/sinryou2/hnousottyu/

(2020年5月12日引用)

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