- 2020年06月19日
- 脳梗塞のリハビリ
半身麻痺で寝たきりの家族に行いたいリハビリ
脳梗塞による後遺症により、起き上がることなどの動作が難しくなると、ベッドで寝ている時間が長くなることがしばしばあります。
ベッドで寝ている時間が長くなると、関節が固まってきたり、筋肉が落ちてきたりしてしまいます。すると、ベッドから起き上がることが大変になり、ベッドに寝ている時間が更に長くなる・・・といった負のサイクルに陥ってしまいます。
この負のサイクルを断ち切るためには、運動とベッドから離れる(起き上がる)ことが重要です。
今回は、ご自宅でご家族様と一緒にできる運動をお伝えします。
ベッドの上でできる安全な運動から、起き上がるための起き上がり運動までお伝えしますので、ご家族様に合った運動を選択してください。
介助するにあたって不安な動作がある場合は、担当セラピストにどのレベルの運動まで一緒に行って良いか確認しましょう。
Contents
ベッドの上でできる運動
ベッドから起き上がることが難しい方や、起き上がることができたとしても、運動前の準備運動として、まずはベッドの上で行える運動をすることをおすすめします。
今回は、腹筋・お尻の筋肉・足全体の筋肉を鍛える運動を紹介します。
▼腹筋
起き上がる動作に必要になってくる筋肉です。起き上がる動作を獲得するための準備運動です。
▼お尻
ベッドから起き上がることが難しい方は、オムツ交換の介助のときにお尻があがるようになると、介助がとても楽になります。起き上がることが可能な方は、姿勢をまっすぐ立ち上がる際に必要となってくる筋肉です。
▼足全体
ベッドから車椅子への移動や、立ち上がる際に両足で踏ん張らなければなりません。そのために足全体の筋肉も鍛えておきましょう。
※筋肉を鍛える運動は、息を止めないことが大切です。息を止めて行ってしまうと血圧があがってしまいます。力を発揮している時は呼吸を吐き、力を発揮していない時に呼吸を吸う、というサイクルで行ってください。
腹筋
両膝を曲げて、お臍を見るように頭をあげます。
手を伸ばして膝を触れる方は、手を伸ばしましょう。
余裕のある方は、右手で左の膝を、左手で右の膝を交互に触り、身体を捻じりながら行いましょう。
麻痺が重い方は、ご自身で膝を曲げた状態で留めておくことは難しいので、ご家族様は両膝が倒れないようにおさえてください。
お尻上げ
よく“ブリッジ運動”と呼ばれています。
両膝をしっかり曲げて、お尻を最大限あげます。
こちらの運動も、麻痺が重い方は、ご自身で膝を曲げた状態で留めておくことは難しいので、ご家族様は両膝が倒れないようにおさえてください。
キック運動
膝を曲げた状態から力いっぱい膝を伸ばしてきてもらいます。まさにキックです。
ご家族様は足の裏と膝下を支えて、蹴ってくる力に対して抵抗します。
蹴る力が強く、力負けしてしまう場合は、無理に行わなくて結構なので、他の運動を多めに行ってください。
起き上がるための練習
ベッドから離れるためには、起き上がる練習が必要になります。
起き上がる動作を細かく分けて、「寝返りをうつ→両足をおろす→肘で支えて起き上がる→手のひらで支える」の順番でお伝えします。
まずは部分部分で練習していき、動作に慣れてきたら、寝返りをうつ~両足をおろすところまで、寝返りをうつ~肘で支えて起き上がるまで等、動作を繋げて練習していきましょう。
最終的にこの一連の動作が行えるようになれば、起き上がることが可能となります。
寝返りをうつ
起き上がるときは、まず横向きに寝返りをうつことが第一段階となります。
寝返りをうつときは、ベッド柵や手すりなどを使っていただいても構いません。
腕の麻痺が重い場合、そのまま寝返ってしまうと、腕が置いてきぼりとなり、肩が痛くなる場合があります。必ず麻痺側の腕をお腹の上に乗せてから寝返りましょう。
また、足の麻痺が重い場合も、そのまま寝返ってしまうと、足が置いてきぼりとなり、寝返りができなくなるので、動く方の足で麻痺側の足をすくって寝返りましょう。
寝返るポイントして、身体を丸めるように、お臍を見ながら行うと寝返りやすいです。
足をおろす
起き上がる第二段階として、寝返った後に両足をベッドからおろすことが必要です。
寝返るときに、動く方の足で麻痺側の足をすくっているので、そのまま動く方の足の力で、麻痺側の足と一緒にベッドからおろします。
この足をおろす動作に関しては、この動作単体で行うと強い足の力が必要となるので、大変です。寝返りからの勢いでそのまま行う方が行いやすいので、寝返り~足をおろす動作まで繋げて練習しましょう。
肘で支える
起き上がる第三段階として、足をベッドから下した後は、上半身を起こして肘で支えることが必要です。
起き上がる動作で大変なところはこの動作で、手こずる方が多いです。
ベッド柵や手すりをもったままの方がやりやすい方は、使っていただいて構いません。
上半身を起こして肘で支えるまでの動作ですが、肘を支点として、肩を肘の真上まで移動させるイメージです。
この動作は、腹筋が必要となるので、腹筋の運動がここで活かされます。
この時のポイントも身体を丸めるようにして、お臍を見ながら行うことが大事です。身体を丸めず、天井を見ながら行ってしまうと、運動したい方向と逆方向に力が働いてしまうので、上手に出来ません。必ず、身体を丸めるようにして、お臍を見ながら行いましょう。
また、身体と肘までの距離も1つ大事なポイントです。身体と肘がくっついた状態で行うと、うまく力が発揮されないので、ある程度離した状態で行いましょう。
手のひらで支える
起き上がる最後の段階として、肘で身体を支えていたところから、更に身体を起こし、手のひらで支えるまでの段階です。
第三段階の肘で身体を支える時の支点は、肘とお伝えしました。次は、その支点を肘から手のひらに移動させます。肘で支えている体重を、そのまま前方へ移動させ、そこから肘を伸ばして手のひらで支えます。
この時のポイントは、身体を少し前に倒しながら、かつ目線はベッドを見ながら行うことが大事です。第三段階でお伝えしたように、天井を見ながら行ってしまうと、運動したい方向と逆方向に力が働いてしまうので、上手に出来ません。
まとめ
今回は、ご自宅でご家族様と行える運動についてお伝えしました。
1日に行う回数ですが、10回を1セットとして1日5セット以上行うことが理想です。しかし、疲れ具合はその方によって異なるので、朝・昼・晩2セットずつや、朝・晩3セットずつなど分けていただいても大丈夫です。
起き上がりの練習に関しては、部分練習から、慣れてきたら一連の流れでの練習で行ってください。難しい動作ではあるので、まずは寝返りから、等順番に行ってください。
他の内科疾患(心臓の病気等)をお持ちの方は、頑張りすぎると逆効果になってしまう場合があるので、担当の医者やセラピストに必ず確認してください。
もし相談できる相手がいらっしゃらない場合は、私たちも相談に乗れますので、お気軽にご連絡ください!
執筆者:ジョイリハNEXT 理学療法士 河野 沙季